スパナ準備・椀に唾液…不可解な行動 蟹江一家殺傷事件

2009年6月1日17時0分 朝日新聞 asahi.com




愛知県蟹江町の会社員山田喜保子さん(当時57)方で5月、一家3人が殺傷された強盗殺人事件で、室内に残されていた凶器のスパナは新品だったことが、県警特別捜査本部への取材でわかった。犯人が持ち込んだ可能性が高いという。刃物より殺傷力が弱い凶器を準備していたことや、半日以上に及ぶ屋内での犯人の行動が明らかになるにつれ、不可解さは増すばかり。事件は2日、発覚から1カ月を迎える。

 捜査関係者によると、スパナは、畳まれたパーカと一緒に玄関付近に置かれていた。喜保子さん方に元々あった工具は古くて数も少ない一方で、スパナはほぼ新品。首にけがをした三男の会社員勲さん(25)も「見覚えがない」と説明。特捜本部は犯人がスパナを持って侵入した可能性が高いとみているという。

 スパナは、5月1日午後9~10時ごろ、喜保子さんの襲撃に使われたとされる。当時、次男のケーキ店店員雅樹さん(同26)も勲さんも不在だった。犯人は家族の財布から紙幣を抜き取って逃げたとみられることから、特捜本部は強盗目的の犯行とみているが、スパナを凶器に選んだことには首をかしげている。

 喜保子さんの次に襲われたとみられるのが、同10時ごろに勤め先から帰宅し刺殺された雅樹さん。凶器は喜保子さん方の包丁だった。勲さんは翌2日午前2時ごろ、友人との飲食から帰宅直後に切り出しナイフで刺された。

 事件発覚は、同日午後0時20分ごろ。出勤してこない雅樹さんのことを心配した職場の上司らの通報がきっかけだった。犯人とみられる男は、上司らと駆けつけた警察官が目を離したすきに逃走した。

 喜保子さんが襲われたとされる1階居間には、大量の血をふき取った跡があった。喜保子さんの遺体も血がきれいにふき取られ、1階和室の押し入れに入れられていた。同じ押し入れからは、喜保子さんが可愛がっていた子猫の死体も見つかった。

 洗面所や風呂場では、水を張った浴槽に血を洗ったような毛布やタオルのほか、帰宅時に履いていた勲さんの靴が片方だけつかっていた。洗濯機のそばには脱水後の洗濯物があり、洗濯槽にも血がついた衣類が残されていた。

 犯人像の絞り込みが難航するなかで、有力な物証も見つかっている。

 一つは、1階トイレ前の廊下で見つかった椀(わん)に付着した唾液(だえき)から検出された犯人のものとみられるDNA型だ。喜保子さんが家族のために用意した夕食のみそ汁を犯人が飲んだらしい。

 そして、スパナと一緒に見つかった犯人のものとみられるパーカ。においがきつく、汚れも目立ち、長期間着用されていたとみられる。

 現場に駆けつけた警察官や勲さんの目撃証言によると、犯人は20~25歳前後。身長は170~175センチ。短髪で、黒っぽい服を着ていた。

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