愛知・蟹江の母子殺傷:「一家3人に何が」 最悪の展開、言葉失う住民

毎日新聞 2009年5月4日 中部朝刊

愛知・蟹江の母子殺傷:「一家3人に何が」 最悪の展開、言葉失う住民

 愛知県蟹江町の住宅で兄弟が刺され死傷した事件は3日、連絡が取れなかった母親が刺殺体で発見されるという最悪の展開となった。息子4人を育てた母、パティシエを目指した兄ら母子3人の家族に何が起きたのか。閑静な住宅街で起きた惨事に、住民は顔をこわばらせ、言葉を失った。【秋山信一、高橋恵子、中村かさね、山口知】

 近所の住民によると、殺害された山田喜保子(きほこ)さん(57)は物静かで飾らない性格だった。以前は夫と息子4人の6人家族で、たこ焼き店を営むなどしていたが、十数年前に夫を亡くし、長男と四男は別居。現在は殺害された次男雅樹さん(26)、軽傷の三男勲さん(25)と住み、名古屋市内の自動車部品製造会社に勤めていた。

 近所の女性(71)は「保育園の送り迎えなど子供たちの面倒を見ながらたこ焼きを売り、優しそうなお母さんだった」と話した。

 また息子が雅樹さんと小、中学校の同級生という女性(52)は「『息子が電動自転車をプレゼントしてくれた』とうれしそうに話していた。なぜこんなことに」と声を詰まらせた。喜保子さんは会社勤めの傍ら、この電動自転車で毎朝、新聞配達もしていた。

 新聞購読者の女性によると、事件発生後の2日朝は通常新聞が届く午前6時半になっても届かなかった。女性は8時ごろに山田さん宅のインターホンを押したが、応答がなく、配達用の新聞は玄関先に置かれたままだった。女性は1日午後4時半ごろに会ったのが最後だったといい「その時は元気だったのに」と驚いていた。

 一方、雅樹さんが勤めていた洋菓子店の上司は「まじめで、無遅刻無欠勤だった。パティシエになりたいと話していた」と言葉少なに語った。雅樹さんは4年前の開店時から勤務。ケーキ製造に携わり、毎日午前6時半に出勤していた。2日朝は出勤してこなかったため、自宅と携帯の両方に電話したが、通じなかったことから警察に届けた。トラブルの話はなかったという。

 現場は県道から路地に入った先の住宅密集地。事件発生前後とみられる2日午前0時半ごろに家族を迎えに戸外に出ていた女性は「おかしな物音や不審車両には気づかなかった」と話した。3時に山田さん宅前を通った男性も異常には気付かなかったという。


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