2009年5月4日 読売新聞 中部発
山田喜保子さん
愛知県蟹江町蟹江本町、会社員山田喜保子さん(57)方で2日、次男のケーキ店店員雅樹さん(26)が刺殺体で見つかった事件で、県警は3日、山田さん方1階居間の押し入れから、所在が分からなかった喜保子さんの遺体を発見した。また、首を刺された三男の会社員勲さん(25)が事情聴取に対し、「男に襲われた際、『金はないのか』と脅された」と説明したことから、県警は強盗殺人事件と断定、捜査本部を特捜本部に切り替えて調べている。
山田喜保子さんの遺体が見つかった自宅を調べる捜査員(3日、愛知県蟹江町で)=大沢奈穂撮影
発表によると、雅樹さんの遺体が発見された1階和室で、押し入れ下段から、喜保子さんの遺体を発見。背中には刺し傷があったほか、後頭部や顔にも傷があった。喜保子さんは肌着姿で、背中をふすま側に向けた状態で押し込められ、頭から毛布を掛けられていた。4日に司法解剖して死因を調べる。雅樹さんの遺体については、3日に司法解剖した結果、背中を刺され、左肺の動脈が切られたことによる出血性ショック死と判明。手首に縛られたような跡もあった。殺害時間は1日午後10時半以降とみられている。
一方、特捜本部が勲さんから事情聴取したところ、勲さんは2日午前2時頃、玄関で男に襲われた際、「金はないのか」と聞かれ、「ここには金はない」と答えたという。勲さんには首の後ろに2か所の深い刺し傷のほか、背中の上部にも4か所の傷があった。玄関付近に勲さんの現金が入った財布があったほか、財布の近くには1万円札が落ちていた。
室内は1、2階とも雑然としており、特捜本部は犯人が物色した可能性もあるとして、奪われたものがないか調べている。
この日の現場検証の結果、犯人が土足で歩き回った形跡はなく、大量の血痕があったのは2人の遺体が発見された和室だけだったことを確認。1階の廊下にも血痕があったが、誰のものかはわかっていないという。山田さん方には包丁が複数あったが、凶器とみられる血の付いた刃物は見つかっていない。当初、見あたらなかった勲さんの鍵は、敷地内で発見された。
また、最初に山田さん方へ駆け付けた蟹江署員が、1階の玄関や勝手口、窓が施錠されていたことを確認しているため、特捜本部は、犯人が施錠したとみている。
遺体発見が3日になった理由について、この日記者会見した立岩智博・県警捜査1課長は「犯人の遺留品の証拠収集に、重点を置いたため」と説明した。
「評判の頑張り屋」 喜保子さん
次男に続き、所在不明だった母親も変わり果てた姿で見つかった。大型連休の真っただ中、愛知県蟹江町の民家で起きた強盗殺人事件。「あの家族に何があったのか」。近所の人たちは不安そうな表情を見せた。
山田喜保子さんは10年以上前に夫を亡くして以降、新聞配達などをして息子4人を育て、義母の介護もする一方、自宅も建て替えたという。今は名古屋市内の自動車部品製造メーカーでも働いており、近くの喫茶店の男性店長(61)は、「近所でも評判の頑張り屋さんだったのに……」と憤った。
子育てや仕事で多忙だった喜保子さんだが、近所の人たちは「会うと必ずあいさつしてくれる気さくな人。性格もさっぱりしていた」と話した。住民の一人は「昨年、息子さんたちから電動自転車をプレゼントされ、本当にうれしそうだった」と振り返った。
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