「玄関で襲われた」 愛知・蟹江の死傷、母親は所在不明

2009年5月3日 中日新聞 朝刊

 愛知県蟹江町蟹江本町の山田喜保子さん(57)方で、次男で洋菓子店従業員雅樹さん(26)が背中を刃物で数カ所刺され殺害された事件で、軽傷を負った三男で会社員勲さん(25)が「帰宅時に玄関先で突然後ろから男1人に襲われた」と話していることが、県警への取材で分かった。県警は殺人事件として捜査本部を設置、3日朝から雅樹さんの遺体を司法解剖し死因を調べる。捜査本部によると、2日午後零時20分ごろ、出勤しない雅樹さんを不審に思った上司と蟹江署員が自宅を訪ねると、両手首を電気コードで縛られた勲さんが玄関ドアを解錠し出てきた。首の後ろや背中を刺され2週間のけが。雅樹さんは上半身裸で、1階和室でうつぶせで倒れていた。

 捜査本部が勲さんに事情を聴いたところ、勲さんは2日午前2時ごろに帰宅、靴を脱いでいるところを襲われた。抵抗したが飲酒していたため意識を失い、同日昼の署員の訪問で目を覚ました。男について「片言の日本語だった」と話し、もみ合いの際に和室で雅樹さんとみられる人が倒れているのを見た。

 雅樹さんは1日は仕事で、午後9時半ごろに退社し、帰宅したとみられる。喜保子さんは、勲さんが1日午後8時ごろ、友人との食事のため外出した際は自宅にいたが、その後所在が分からなくなっている。

 山田さん方の室内は雑然としていたが物色されたかは分かっていない。室内から凶器は見つかっておらず、外部から押し入ったような目立った跡はなかった。捜査本部は山田さん家族周辺にトラブルがなかったか関係者から事情を聴いている。
◆同級生「早く解決を」

 亡くなった山田雅樹さん(26)はケーキ職人の夢に向かい、仕事に打ち込んでいた心優しい若者だった。高校の同級生だった蟹江町の男性(26)は、突然の悲報に「あんなに性格のよかった雅樹がなぜ」と嘆いた。

 男性によると、雅樹さんは3年ほど前から、愛知県津島市内の洋菓子店に勤務。ケーキ作りの腕を上げようと、年2、3回コンテストに作品を出品し、仕事に熱中していた。

 口数は多くないが、親しみやすい人柄。「弟に自分の車をあげるなど家族思い。誰からも恨まれるようなことはない」と言い切る。

 つい10日ほど前にも会ったばかり。男性が「野球を一緒にやろう」と誘うと、楽しみにしている様子だった。その最後の笑顔が忘れられない。

 ニュースで事件を知り、雅樹さん宅に駆けつけたが、現場では何が起きたのか分からないまま。「早く解決し、弔ってあげたい」と親友の死を悼んだ。