愛知・蟹江の母子殺傷:逃げた男の情報隠し 愛知県警へ住民から不満の声

毎日新聞 2009年5月9日 中部朝刊

 愛知県蟹江町の一家3人殺傷事件で、現場の会社員、山田喜保子さん(57)方に駆け付けた県警蟹江署員が屋内で不審な若い男を目撃しながら逃げられたことを県警が公表していなかったことに対し、付近の住民からは8日、「知らせてほしかった」と不満の声が上がった。一方、県警は改めて「捜査上の秘密」を理由に公表しなかったと説明し、対応に問題はなかったと強調した。

 立岩智博・県警捜査1課長は同日、情報を公表しなかったことについて「現場の状態などは基本的にすべて捜査上の秘密。言わなくてはいけない部分はあるが、捜査の中で判断した。周辺住民には注意喚起した」などと説明した。

 これに対し、近所の女性(36)は「(事件発覚は)連休後半初日の昼で外を出歩く人も多かったのに、逃げた男が近くを通ったかと思うと怖い。凶器を持っていたかもしれないのに、なぜ知らせてくれなかったのか」と不満を述べた。一家をよく知る男性(57)も「警察が聞き込みに来たのは発生から1日以上過ぎてから。喜保子さんの遺体が発見されたのも発生翌日で、警察がしっかり捜査をしてくれているのか不安だ」と話した。

 捜査幹部によると、現場に残された被害者3人の財布に紙幣が残っていなかったことも新たに判明。蟹江署特別捜査本部は姿を消した男が奪った疑いもあるとみている。

 特捜本部によると、署員は2日午後0時20分ごろ、山田さん方に駆け付け、両手を縛られた三男勲さん(25)を保護。玄関のドアのすき間から玄関口にうずくまっている男が見えたが、勲さんが「犯人は逃げた」と話したことから被害者と思い込み、署との無線連絡のため現場を数分離れた間に逃げられた。特捜本部への説明では、勲さんは男が既に逃げたと思っていたという。【福島祥、中村かさね】



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