2009年5月10日 読売新聞 中部発
愛知県蟹江町の親子3人殺傷事件で、現場からスニーカーが1足なくなっていることや、犯人が土足で上がり込んだ痕跡のあることが9日、わかった。犯人は、三男で会社員の山田勲さん(25)を襲った際、足にけがをして出血した可能性があり、県警特捜本部では、犯人がスニーカーを盗んで履き替えたか、署員に発見されて慌てて手近にあった靴を履いて逃げたのではないかとみている。
捜査関係者によると、現場検証の結果、家の中にあった家族のスニーカー1足が見当たらなかった。一方、廊下などから、土足で歩いた靴の跡を数か所、確認した。勲さんも特捜本部に対し、「犯人ともみ合いになって、刃物を一度取り上げた。犯人の足に刃物が当たったかもしれない」と説明しており、犯人が血の付いた足跡を残さないようにスニーカーに履き替えた可能性もあるという。
特捜本部は、男が侵入時に履いていた靴が残っていないか調べると共に、室内にあった足跡から、靴の種類やサイズを調べている。
室内に血付き小刀
次男でケーキ店店員の雅樹さん(26)が刺殺体で見つかった1階和室から、血の付いた小刀が見つかった。勲さんの傷跡などから、犯人が勲さんを刺した際に使ったとみられている。小刀について、勲さんは「見覚えがない」と話しているという。
一方、蟹江署員に保護された際の状況について、勲さんは「玄関のチャイムが鳴った時、近くに犯人がいなかった。力を振り絞って初めて起き上がり、玄関の鍵を開けて外へ出た」と説明している。
署員が訪れる前には、新聞配達と、次男の勤めるケーキ店従業員が玄関のチャイムを鳴らしていたが、犯人はその都度、勲さんに布団のようなものをかぶせるなどして応対させなかったため、勲さんは当時、「犯人はすでに逃走したと思った」という。
事件は9日で発覚から1週間。犯人は長時間、家の中にとどまっていたほか、執拗(しつよう)に証拠隠滅を図るなど、異様な行動も徐々に明らかになってきた。
残虐な手口から、特捜本部は当初、恨みによる犯行との見方を強めていたが、今のところ、一家の周辺に目立ったトラブルはなく、その後の捜査で、3人の財布から紙幣が盗まれていたこともわかり、動機ははっきりしない。
さらに、母親の喜保子さん(57)の遺体の血をぬぐって押し入れに隠し、飼い猫も殺すなど、不可解な行為に、捜査幹部は「金目当てだったとも考えづらい」と話している。
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